会員書籍の紹介『動物園と水族館の教育 ーSDGs・ポストコロナ社会における現在地』

朝岡幸彦編著

『動物園と水族館の教育 ー SDGs・ポストコロナ社会における現在地 』

学文社 2023年3月 A5版 176頁 定価1,900円+税

【執筆者】
**朝岡幸彦、日置光久、荒井雄大、飯沼慶一、山﨑 啓、河村幸子、赤見理恵、野村 卓、笹川孝一、佐々木美貴、中澤朋代、田開寛太郎、*髙橋宏之、冨澤奏子、島田晴加、*大和 淳、天野未知、古川 健、水谷哲也、渡辺 元、大倉 茂、高田浩二(執筆順,**は編者,*は編集担当者)

 動物園と水族館が「博物館」の一種であることは、あまり知られていません。博物館法第2条には、「歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、併せてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関のうち、次章の規定による登録を受けたものをいう」と規定されています。ただし、ここの「資料」が生きている「生き物」であって、飼育・生育をともなうところが他の博物館と大きく異なるところだと言えます。

 ところで、日本にはいくつ動物園と水族館があるかご存知でしょうか。社会教育調査(2018年)によれば動物園59園、水族館43館、動植物園16館、植物園101園とされていますが、日本動物園水族館協会(JAZA)の正会員は動物園90園、水族館50館であり、インターネットで検索すると(少なくとも)動物園148園、水族館120館があることがわかります。日本は世界的に見ても動物園・水族館「大国」であり、水族館の数は世界一なのです。

 さて、コロナ禍による社会の変化やSDGsの普及等による価値観の変化などを受け、動物園と水族館は新しい姿に変わろうとしています。本書では、教育・環境教育をその機能の一つとしてもつ動物園・水族館の理念や活動について、研究者や動物園・水族館職員などの多彩な執筆者が論じ、その独自の教育的価値と新たな可能性を提言しています。他方で、観光拠点推進法(文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律)のターゲットの一つが、インバウンドが多く来園・来館する動物園と水族館です。

 湿地の入り口(ビジターセンター)でもある動物園・水族館のあり方について、会員のみなさんとともにご議論させていただければと思います。

朝岡幸彦(東京農工大学)