査読規定

湿地学会会誌『湿地研究』査読規程(2016年8月26日改訂)

この査読規程は,日本湿地学会会誌『湿地研究』(以下,会誌と称する)に投稿された査読付き論文(「原著論文」「実践研究」「総説」「研究ノート」)の原稿について,査読の目的と基本姿勢,投稿原稿の会誌への掲載適否を判定する基準,ならびに査読の手順を定めるものである.

1. 査読の目的
査読は,刊行・投稿規定を受け,投稿原稿の公平な審査を通じて良質かつ有益な査読付き論文を迅速に読者に提供することを目的に,投稿原稿が査読付き論文として会誌に掲載されるにふさわしい内容のものであるかどうかを判定するための資料を得るために行う.

2. 査読に当たっての基本姿勢
会誌の刊行目的に資するため,科学的・学術的観点から価値ある論文を発信することに加え,研究者や科学者のみならず,湿地の保全や利用に関わる幅広い主体,例えば行政・企業・団体・学校・市民団体・個人が,それぞれの視点から多様な情報を発信し,それをとおして共有価値を高める場となることを重視し,広く社会に活かす視点が含まれているかを査読における重要な観点のひとつとする.

3. 査読の基本的事項
1) 記事の内容に対する責任は著者が負っている.
2) 査読者は専門的見地から「論点及び事実の新規性」「論拠の明示性」「方法の再現性」「考察の妥当性」「全体を通した論理性」について意見及び判定案を述べる.
3) 査読は内容の批判や討議を行うものではない.したがって見解の相違は掲載不適の理由とはならない.
4) 査読者は,著者に対して研究指導する立場にない.よって,投稿された原稿に対して,新たな調査や実験等の追加要求は極力避けなければならない.
5) 投稿された成果ができるだけ早く公表されるよう,査読者は査読期間を遵守しなければならない.
6) 査読者は査読により知り得た掲載前の原稿の内容を,いかなる形でも利用・剽窃・漏洩してはならない.
7) 個々の投稿原稿についての査読者名は公表しない.また,著者との折衝はすべて編集委員会が行うこととし,査読者が著者と直接に折衝してはならない.

4. 掲載適否の判定基準
新規性,有用性,信頼性,明示性などの観点から,以下の基準に基づき,客観的に掲載適否の判定を行うこととする.

4.1 共通事項
(1)内容について
1) オリジナリティがあること
2) 読者にとって有益であること.
3) 目的が明確であること.
4) 内容に基本的な誤りがなく,論理的な構成となっていること.
5) 目的に対して適切な方法(調査、実験、情報の整理や解析の方法)がとられており,かつその方法が再現可能な記述となっていること.
6) 全体的に簡略に過ぎたり,不必要に冗長過ぎたりしないこと.
7) 「特集」の記事については,「特集」の企画提案の目的に適合していること.

(2)表現について
1) 原稿全体の構成が整っており,かつ執筆要領に整合していること.
2) 文章の表現や字句が適切であること.
3) 表題は本文の内容を的確に表していて適切であること.
4) 要旨は本文の内容を的確にまとめた適切なものであること.
5) 図表やそのタイトルと説明文が適切であること.
6) 学術用語や,単位,記号の使い方が適切であること.
7) キーワードが適切であること.

(3)「掲載不適」とする理由として,下のようなものが挙げられる.
1) 刊行・投稿規定に従わないもの.
2) 重要な部分に根本的な誤りがあるもの.
3) 重要な部分に剽窃が強く疑われるもの.
4) 事実に基づいた内容ではなく,単なる主観が述べられているに過ぎないもの(「原著論文」,「研究ノート」の場合).
5) 通説が述べられているだけで,オリジナリティがないもの.
6) 修正を要する根本的な指摘事項を多く含んでいるもの.
7) 連載形式で構成されているため,1 編ごとに独立したものと認められないもの(「特集」の記事を除く).
8) 全体構成や文章が粗雑で,内容の判定ができないもの.
9) 内容が会誌の趣旨に合わないもの.
10) その他,会誌に掲載する原稿としてふさわしくないもの.

4.2 個別事項
(1)原著論文
1) 既存の知識・技術体系に対して、新たな知識・技術を提示していること(この点を原著論文におけるオリジナリティとして評価する).
2) 既存の知識・技術体系に対して、新たな知識・技術の位置づけが明確であること.
3) 設定した課題に対する合理的な考察を経た結論が含まれていること.

(2)実践研究
1) 湿地に係る社会的・実務的課題に対し,その解決に至るプロセスが述べられていること.
2) 課題解決にあたってとられた、既存の知識や技術の統合方法・利用方法等についての工夫が記述され、かつその工夫が課題解決に果たした役割が評価されていること(実践研究ではこの点をオリジナリティとして評価する).
3) 既存の知識・技術体系に対する位置づけを整理することは必要としない.

(3)総説
1) 対象とするテーマに関する既往研究及び公表事実が十分に取り上げられ,それらが明示された視点から整理されていること.
2) 対象とした分野またはテーマに関する考察及び論議を含んでいること.
3) 対象とする分野またはテーマの整理及び考察の仕方に新たな視点・論点が盛り込まれていること(総説ではこの点をオリジナリティとして評価する).

(4)研究ノート
1) 新たな知識・技術を提示する研究(原著論文タイプ)の場合には,原著論文の査読基準に準ずる.なお必ずしも設定した課題に対する結論までは要さないが,公表の価値が認められること.例えば、仮説検証のために必要な検証すべき多くの事象の一つを検討あるいは記述していること,知見の蓄積が重要なもの(例:生物の分布・生態・形態の観察記録等)についての知見が提示されていること.
2) 社会的・実務的課題への対応プロセスや工夫を記述するもの(実践研究タイプ)については,実践研究の査読基準に準ずる.なお記述する工夫等が課題解決に果たした役割の評価までは要さないが,公表の価値が認められること.例えば,類する課題に取り組むものにとって参考となる知見が含まれる等,読者や社会にとって価値ある内容を含むもの.

5. 手続き
1) 査読者は原則として「原著論文」「実践研究」及び「総説」は2 名,「研究ノート」は1名とする.
2) 査読期間は原則として概ね1ヶ月とし,さらに時間を要する場合は,査読者は速やかに担当編集委員に連絡し了承を得るとともに,担当編集委員は査読者の事情に配慮する.
3) 担当編集委員は査読者の意見及び判定案を参考として編集委員会としての判定案を作成し,編集委員会の責任において取り扱いを判断する.
4) 査読者による査読は原則として2回までとし,それを超える場合は編集委員会において修正依頼及び確認を行い判定する.
5) 査読者による査読結果報告の項目及び様式は別紙1 のとおりとする.
6) 英語論文に対する査読結果のコメントは,連絡対応著者の了解があった場合には日本語でも可とする.

以上

別紙1(査読報告書様式)